長いこと工事してた上野駅前・西郷会館跡再開発施設が、「UENO 3153」 として、今週末ついにオープンします。

新名所「UENO3153(さいごうさん)」、9月15日オープン(流通ニュース 8/28)
上野広小路商業協同組合は9月15日、上野公園に複合商業施設「UENO3153(さいごうさん)」をオープンする。上野の西郷さん銅像直下にファミリーレストラン「聚楽台」が営業するビルとして、長年上野のシンボル的存在であった上野公園「西郷会館」をリニューアルオープンするもので、2010年から解体・工事に着工していた。


上野駅不忍口前からの様子。このように非常に横長の建物で、上野駅の高架のすぐ前に位置しているため、全体像を撮影するのはかなり苦労します。

それはともかく、上野の街のファーストインプレッションを決定づけるこの立地に、このようなエコ志向でポストモダンなデザインの商業施設が誕生するのは喜ばしい限りです。
年齢的に渋谷や新宿の雑踏がだんだん苦痛になり、かといって銀座や丸の内では気取りすぎていて・・・、しかし、駅前に「西郷会館」がデンと居座る昔ながらの上野ではちょっと泥臭すぎて他の繁華街に代替するには役不足・・・、そんな私のような40代・東京の東の方在住の人にとって、上野が「適度に」垢抜けてくれるのは大歓迎なのではないでしょうか?(笑)


 
(流通ニュース)より引用
外観は全面ガラス張りの斬新なデザインを採用。2階、3階には壁面の特設のプランターを配置、常緑のヘデラを植栽、2本の緑の帯が横に広がる工夫をした。
3階から地下2階まで人気グルメ店、老舗料理店が出店し、3階には西郷像にゆかりの店名の「海鮮料理薩摩魚鮮」と、上野の森の老舗フランス料理店として知られる「上野精養軒3153店」が出店する。(以下略)

ということだそうで、21世紀になってもずっと「戦後」の雰囲気を残していた上野駅不忍口前の雰囲気は一変しました。壁面緑化のグリーンのラインが公園の緑と連なり、このすぐ背後に広大な上野公園の森が広がっていることを、駅を降り立った人に視覚的にアピールする演出のようです。



旧西郷会館
在りし日の西郷会館はこんな感じでした。 なんでも、建て替え(?)は何十年も前からの上野広小路商業共同組合の悲願だったんだそうです。この場所はあくまで上野公園の一部であり、登記上は存在しないのだとか。戦後の闇市を立ち退かせるための臨時の仮設建築が21世紀まで延々残ってしまったとうことです。  




記事によると、壁面緑化には「常緑のヘデラ」という植物が使われているそうです。乾燥や暑さ、排気ガスなどへの耐性があるようです。まだ植栽されたばかりなため、遠目に一見造花かと思いましたが、こうしてアップでみると、本物の植栽だということがわかります。「ヘデラ」がどのくらい葉が生い茂る種なのか知りませんが、このままの状態では、大きな公園と一体化した建築の壁面を飾るにはちょっと弱いかも。この建物の演出が成功するかどうかは「ヘデラ」君の育ち方にかかっているということでしょうか。



京成上野駅側の公園入口階段から。正面右奥が上野駅不忍口。
「3153」と駅の間を道なりに左に進むと美術館博物館が密集するエリアへと向かいます。そのため、この通りの街灯には常に美術展、博物展のフラッグが掛かっていて、これは上野ならではのアートな雰囲気です。歩道も拡幅され電柱もなく、ゆったりと歩けるようになったんですが、こうしてみるとまだどこか殺風景な印象。「3153」壁面の「ヘデラ」がまだ茂っていないこともありますが、より風景に溶け込み、公園と一体化した感じになるためには、歩道に街路樹があった方がいいんじゃないかな。


 
「3153」の屋上。言うまでもなく、そこには西郷さんがおわします。上野公園から連続した屋上テラスは、下の大通りとエレベーターでダイレクトに行き来できるようになります。(聞くところによると旧西郷会館でもそうなっていたそうですが、知りませんでした。)


 
ヨドバシカメラ前バス停から。上野駅側からはあまり見えない上野公園の巨木が「3153」を覆うように茂り、現時点でも、建物が、公園の緑へ埋没する感じが少しでています。



敢えて言えば、手前側の白い壁面が公園の緑との断絶感を感じさせるので、こちらにも蔦を這わせるなどして緑化した方が、より上野公園との一体感が出て美しいんじゃないでしょうか?



アメ横入り口前あたりから上野駅不忍口を経て、公園内美術館・博物館エリア方面を臨む。公園の緑と新生「3153」の狭間で、まだ終戦直後の雰囲気そのままで営業を続ける「上野松竹デパート」の「懐かしい姿」がガツンと目に飛び込んできます。



極端すぎる新旧の建物が入り乱れ、バスやタクシー、歩行者でゴッタ返す光景は、この一角だけアジアの新興国といった趣w。
ちなみに松竹デパートと東宝ビルの上に乗っかるように頭を覗かせているのは、上野公園の文化施設のうち最も南側にある「上野の森美術館」です。


 
奥の「上野東宝ビル」は、すでに数年前に建て替えが完了しています。「3153」がようやく完成した今、残るはこの「上野松竹デパート」のみです。両隣が超モダンに生まれ変わっただけに、老朽化するにまかせたこの建物の存在感はいっそう際立ち、一種異様なオーラを不忍口に照射しています。



「東宝ビル」前から「3153」方面を臨む。
個人的には「3153」より、現代美術館のようなシンプルなファザードに竹をあしらった「和テイスト」も加味した「東宝ビル」のデザインの方が好みですね。美術館エリアと上野の街をつなぐ導線上の建物がこういう感じだと、美術鑑賞を堪能した余韻を損なわないで上野の街にでることができます。

それだけに「松竹デパート」の外観が街並みの連続性を分断してしまっているのは非常に残念な状況です。

戦後の香りを残す上野の風景にノスタルジーを感じる人も多いと聞きますが、本来上野駅不忍口~公園口にかけてのエリアは、ターミナル駅を降りるといきなり緑豊かな大公園が出迎え、そのまま日本最大の芸術施設の集積地へと誘う、文化への玄関口であったはずです。
 


 ところ
が、戦後の混乱期に緊急避難的に公園の敷地内に仮設構造物が建てられ、様々な複雑な事情で「本来そこにあるはずのない」建物の存在が既成事実化してしまった。

そして戦後60年以上という長い長い歳月を経て、ようやく利害が整理され、まるで美術館がもうひとつできたかのようなデザインや、また、植栽を施して上野の森との一体化を図るような外観をもった建物に生まれ変わってゆく。そしてそのことは決して「上野らしさを失う」ことではなく、「上野の街の本来のスタイル」を取り戻すことなんじゃないかと私は思います。

「松竹デパート」の再開発計画が進んでいるのか停滞しているのか、どういう障害があるのかないのか、よく知りませんが、一刻も早く再開発に着手してもらいたいと願います。デザインは、両サイドのどちらかのビルに統一、いやこの並びを見比べると「3153」より、東宝ビルの方に統一した方がいいんじゃないかと感じるんですが、いかがでしょう。 


 
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